1999年のこと 9


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川上さんとバスに乗る。
ってか川上さんじゃないし。
でも、もはや私の中では
川上哲治よりも川上さんだ。
バスの中で有馬で30万円やられたことを
川上さんに話した。
川上さんは、真面目な顔して
「俺は金ないで~貸してやれないぞー。」
って小さな声で言った。

まさかの返し。俺が金貸してほしくて、
相談話したみたいになってしまった。
いやいやそこはただ笑ってくれれば
よかったのにー。しかも、名前も知らない人に、
金貸してっていわないし!
でも、川上さんは、
毎回1レースに500円しか賭けない。
かたくななポリシーの持ち主。
勝負レースには倍の1000円。
11R全部買っても6000円。
そんな川上さんからしたら30万負けた話は
深刻に聞こえてしまったのだろう。
少し反省。

ただスペシャルウィーク
一点勝負したことに後悔はないことと、
お金は貯金箱あけたことも説明して
笑い話になった。
川上さんは毎回会うたびに
同じ話をバスの中できまってする。

大井町には三菱重工があるんだけど、
実は昔そこで日本軍の戦車つくってたんだ。
だから空襲で狙われちまって、
ここら辺も焼け野原だったんだ~」って。
そのたびに
俺は初めて聞いたような振りをする。
今日もお約束のその話を聞いたくらいに、
とうちゃく~。

今日のメインは
第9レース第45回東京大賞典GI
発走は15時40分!
第1レースの発走は10時55分
今はまだ10時ちょいすぎ。
でもさすがGIいつもより人が多い。
いつもと違う雰囲気に少し緊張。
予想屋のおじいちゃんたちも、
心もち顔色がいい。

地方競馬場には組合が
認めた認定予想師たるものがいる。
だいたいおじいちゃん1人と
弟子1人の2人で店をやってる。
予想を5cm角ぐらいの紙に
スタンプで馬連を4~5点押す。
それを100円で売る。
1日分まとめてなら1000円とか900円とか。
人気のある予想屋なんか、
みんな、その口上を聞くのに
黒山の人だかりになったり。
なんせ、買い目スタンプの紙もらうときに
初めて100円払う、口上きくのはタダなのだ!
人が集まると気分よくなっちゃって
予想口上をレース締め切りギリギリまで
するもんだから、予想の紙、
奪い合いみたいな感じになったりする。
これがまた、地方競馬にきてるなーって
感じがしていいんだ。
川上さんのおきにいりの予想屋「ゲートイン」
そこのおじさんとは、もう二十年来の
知り合いみたいな感じで話してたり、いつも
ゲートインの近くに自分の居場所を確保している。
私もその予想屋の口上が好きで
ついつい聞いちゃう。
けど私はあくまでも参考。予想も買わない。
川上さんもその日の勝負レースしか買わないし
買い方も単勝枠連しか買わない。
ただ的中したときは、
ゲートインのおじさんにご祝儀を渡す。
川上さんだけじゃなく
それがここの風習。流儀。
JRAの競馬場では、絶対みられない光景。
昭和的だしなんか異国にいる感覚にすら襲われる。
川上さんは5色の蛍光ぺンを使って
キレイに新聞を塗る。
過去に同じレースを走っている馬柱の色分けして
力関係くらべが一目瞭然!
今日も川上さんの新聞はフルカラーだ!

地球滅亡まであと2日